傑作。残酷なのに美しい…映画『ミスミソウ』感想&原作との違い

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映画ミスミソウ、観て参りました…。

残酷描写の豊富な映画を劇場に観に行ったのははじめてでした。

感想を一言で言うと…

最高に醜くて、それ以上に美しすぎる映画。

登場人物の一人、池川くんが「君の存在はこの環境には毒だ。美しすぎる」という表現をします。

まさに、その台詞の通りの作品です。

原作のミスミソウが連載されはじめたのは2007年。

私は単行本が出てから読んでいたのですが、これはアニメよりも実写向きだなーと子供ながらに思っていました。

10年の時を経て、まさかの本当に実写映画化!びっくり!

嬉しすぎてつらすぎて映画の開始5分あたりからすでに泣いていました。

どうもベッケですっ! 漫画家、押切蓮介先生の『ミスミソウ』が来年の春に実写映画化ですね…! 怖いな~~~!もう読...

再現度が最高。原作愛が凄い。

再現度ほんとにやばかった…

原作の良い所をすごく上手く引き出してくれてました。

漫画の実写化はかなり失敗しやすいイメージがあります。

でもミスミソウは大大大成功です。

  • 生々しいいじめ
  • 大胆なグロ描写
  • 春花の美しさ
  • 表情で伝える言葉

どれをとっても完璧でした。

押切蓮介先生の作品には、台詞ではなく、表情や仕草で心の声を描くという特徴があります。

映画のミスミソウはその魅力をこれでもかと引き出してくれていました。

まさに、原作愛に溢れていました…

ただ残酷なだけじゃない。

予告だけ見ると、もしかしたら「なんだ、グロ系の復讐物語か。あるある」としか思わないかもしれないです。

実際に内容は壮絶で、いじめっこだけでなく、問題から徹底して目を逸らす担任や、いじめっこの気持ちを汲み取らない親たちもふくめ、登場人物の汚い側面は、それはもう極端に描かれています。

復讐が始まってからのグロ描写もすさまじく、目に釘がグサー刺さるわ、鼻をペンチ(原作ではハサミ)でバッチンするわ、足がどえらい方向に折れるわで、とにかく血みどろ!中盤以降は阿鼻叫喚の地獄絵図です。

でも、この映画はそれだけじゃない!

というのも…

加害者も普通の子供だった

加害者をただの悪者として描いているわけではないのが、ミスミソウの大きな特徴なのです。

(加害者を庇う意図はありませんぞ)

家庭が不仲だったり、

生きる楽しみを見出せなかったり、

好きな人に理解してもらえなかったり…

そして、そんなもやもやを解消する術すら、寂しい田舎町には存在しない。

日ごろの八つ当たりや娯楽の手段は…そう。

暴力に行きついてしまった。

それでも、いざ反撃されて、自分自身が死を前にすると、

すべてを後悔し、親の愛を求めてしまう。

皮肉なものです。

そんな思春期の子供たちの複雑な一面が手に取るように伝わってくるのもミスミソウの深いところですね。

春花の異常な美しさ

また、春花の繊細な表情の動き、歩く姿や立ち姿が非常に美しく、ついついため息がこぼれてしまいます。

家族を殺され、声を失って表情も動かなくなっていた春花は、命だけが取り残されたような異様な存在になっているような気がしました。

しかも、悲しみで崩壊した春花は、それ以前よりも一層儚く綺麗になった気さえします。

これもまた皮肉な感じ…。

淡々と人殺しをくりかえす様子を見ていると「殺人マシーン」という言葉が浮かんできたんですが、うーん…春花にこの言葉は似合わないな…

殺人鬼。いや、殺人花?

おそろしくも綺麗だから、こういう表現に置き換えたくなります。

後味は漫画よりも良かった

ちょっとだけ原作を改変されていて、そのおかげか、後味が原作よりも良い印象です。

もちろん胸糞悪いですよ!

悪いのですが、劇場から出る時、なんだか心が洗われたような気分だったんです。

美しい花の一生を見届けたような、そんな気持ち。

怖くて残酷で不謹慎でグロテスクなのに、この映画に出会えて良かったなあって思えるなんて、ちょっと不思議ですよね…

帰りの足取りがめちゃくちゃ重くなるのを覚悟していたのに、むしろルンルンでした。

私は生きているー!って感じ。

改変もとても良かった

ここからは原作との違いを紹介します。これから見る予定の方はご注意を!

小黒さん。胸を張って生きて

原作の改変もファンから叩かれやすいものですが、ミスミソウの改変はすごく良かったです。

冗談抜きに、本当に良かった。

泣きまくった。

パンフレットで押切蓮介先生自身も絶賛していました笑

映画ミスミソウの原作との違いは、小黒妙子の生存です。

原作では春花との会話の後、流美と戦闘してそのまま死んじゃうんですよね…

でも、映画での妙ちゃんは生き残り、無事に卒業することができました。

いやもう、感動しすぎてズビズビ言わせながら泣きました…

救いのあるミスミソウだ…

春花が最後に彼女に言った言葉は

「胸を張って生きて」

でしたよね。

春花の優しい願いが、映画では叶っているんだなあと…

しかし…!

パンフレットを読むと、少し見方が変わりました。

妙子は言い換えれば、生き残って「しまった」のです。

彼女は、いじめの元凶です。

友達をかきまわし、暴走させ、殺し合わせた。

それなのに、自分だけが生きてしまった。

つまり、一生この惨劇を背負って生きていかねばならないのです。

一番の被害者である春花が「胸を張って生きて」と言ってくれたのがせめてもの救いですね。

願わくば、両親とまた話し合い、東京へ行って、美容師の願いを叶えてほしい。

おじいちゃんは死んだ?

そういえば、映画では春花のおじいちゃんは死んじゃったのかな…という疑問があります。漫画では生き残るのですが…映画では触れられませんでした。春花の妹、しょーちゃんについてもです。

おそらく死んじゃったんだろうなあ。

でもこの作品においては、おじいちゃんが死ぬことはある意味救いなのかもしれません。非常に悲しいですけどね…。漫画でただ一人生き残ったおじいちゃん、やっぱり可哀想でしたもの。

その点では、未来のある妙ちゃんが生き残っているエンディングは、漫画よりは後味が良かった気がします。

最後に

10年前、私は春花と同い年くらいでした。

ミスミソウは当時の私にとって衝撃的な作品で、どうすればこんなことが起きずに済むんだろう、私ならどうするだろうと何度も問いかけながら読んでいました。

その時に出た答えはもちろん、ちょっとやばいと思ったらすぐに家族に相談して学校に行くのをやめることです。しんどければ病院にも行く。

映画の監督さんも仰っていましたが、いじめに苦しんでいる人は無理に学校に行かないで、気分のスッキリする映画でも見に行きましょう!!

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コメント

  1. ぽいぽい より:

    ミスミソウ
    いい映画でしたね。
    涙が止まりません。

    • somuty-san より:

      返信が遅くなってすみません。
      メッセージ、ありがとうございます。

      本当にすばらしい映画でした…。
      とても悲しいお話のはずなのに、劇場を出た時、空気が美味しくて心が洗われたような気分でした。
      トラウマになると思いきや、それとは真逆のものを持ち帰らせてもらたと思います。